REPORT | 映画公開記念トークライブ:テーマ「都市と照明」
「ザ・シティ・ダーク - 眠らない惑星の夜を探して」の日本公開イベントが渋谷にある映画館アップリンクにて行われました。アメリカの映画監督イアン・チーニーが制作した本作は、都会の夜の照明によって夜空が明るく照らされる「光害」という問題が、環境や人の生活にどのような影響を及ぼすのかについて取材・調査したドキュメンタリー映画です。今回公開記念として、建築家である山梨知彦氏(日建設計)と岡安泉(岡安泉照明設計事務所)によるトークライブが行われました。ここではトークの模様を抜粋して掲載しております。全編をお聞きになりたい方は、ポッドキャスティングでお聞きください。
※今回のトークライブの全編は模様はポッドキャストで聴くことができます。
下記のバナーをiTunesにドラッグしていただくと、iPod、iPhone等で聴くことが出来ます。
※ブラウザで直接聞かれる方はこちらからどうぞ。
都市の進化は始まったばかり。大きな事件を乗り越え、
建築家として何をすべきかを考える(山梨知彦)
山梨 都市の進化は人類の進化に比べればそれほど長い年月をかけてきたものではないんです。僕らが知っているモダンな都市っていうのは江戸時代くらいからでせいぜい100年くらいしか経っていないんですよ。だから「都市が出来た」っていうのはおこがましい事で、壮大な実験のスタートを切ったという思いがすごくあるんですよ。だから3.11以後、我々の都市の実験は失敗したとかではなくて、それは残念で悲惨な出来事だったんですが、もう一度人間が住んでいく都市を考えるほんの始まりの事件だったんじゃないかなと思うんですね。
よく3.11以降建築がバッタリ変わったって言いますけど、それは9.11以降の時も同じような事が言われましたが、実はそうではなくて、まだまだ同じような事が起きると思うんです。これから多くの事がたくさん起こっていって、その度に人間は戦って、極端にあっちに行ったり、こっちに行ったりしながらやって行くしかないんです。そんな中で僕たちは考えているつもりだから、都市っていうものの存在がまだ始まったばかりのところで、建築家として何をすべきかって事を一生懸命考えて行こうと思っています。
震災を経験した今だからこそ考えられるアイデアはあると思う。
それは照明に対しても、街に対しても。(岡安泉)
岡安 僕は被災地に行く機会があって、その時「すぐに戻さなきゃ」と思ったんです。でも戻すといってもやり方は色々あるし、以前のままに戻す事ではない訳だから何かアイデアが欲しくなるじゃないですか。そこで照明で何が出来るんだろうと考える訳です。3.11以前で照明に描いていた世界と以降で考え方が変わるのかといえばそれほど変わらないんですが、言い方に問題があるかも知れませんが僕は今回の出来事を「チャンスが来たんだ」と思ったんです。
今回の映画を見て思ったんですが、それまで僕は「星空」に全然興味なかったんですよ。だから(3.11以前に観ていたら)ポカンとしていたかも知れません(笑)。でも今だと情報の入り方が変わったというか、自分で判断する為の情報の取り方の精度が上がってきると思うんです。でもそれは僕のせいではなくて、きっと環境のせいじゃないかと。
原発の話もそうですが、TVの情報をあまり信用しなくなったとか、情報を選ばなきゃならない能力が個人に求められているじゃないですか。選ばなきゃならないとなった時に今回の映画のような情報があると、今ならちゃんと観られるんです。僕は今のような環境の変化の中でなら、新しい照明に対するとか、新しい街に対して何かこういう事が出来るんじゃないかなっていうアイデアが出てくるような気がするんですよ。 |